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現役医師が暮らしを豊かにする知識やモノを紹介します。医者や医療の実情も時々語ります。

ニキビの正しい治し方

ニキビは男女問わず大きな悩みの種。

そこで今回は正しいニキビの治し方について話します。

 

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いきなり結論を先に言ってしまうと、「皮膚科を受診して過酸化ベンゾイルorアダパレンのクリームをもらう」です。

「なんだそれは?」
「ピーリングが良いってInstaに書いてたけど」
「皮膚科で薬もらったら肌がかさかさになったよ」
そんな声が聞こえてきそうですのでここから詳しく書いていきますよ。


ニキビは医学用語ではない


ニキビは医学用語では尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)といいます。

ネットで「ニキビ 治し方」なんて調べても、怪しいサイトや市販の製薬会社のサイトばっかり。
ニキビは素人向けの用語ですので、素人に対する販売目的のサイトばかり出てくるのは当然ですね。

「尋常性ざ瘡 治療」と調べてみてください。
実は日本皮膚科学会から尋常性痤瘡のガイドラインの2017年版が出ています。


ガイドラインというのは、様々な論文や研究からエビデンスのある(効く、効かないの証拠が十分な)治療や検査方針について記載されたものです。

怪しげな健康食品などの広告でも、この研究では〜などと最もらしい引用などがされていますが、よく元論文を読んでみると拡大解釈だったり、とても研究と言えるような質の高いものではないことが多々あります(というかほとんどそうですね)。

その点ガイドラインは多くの医師により概ね客観的にみて信頼性の高い情報からの知見がまとまっていますので、基本的には信用に値するものになります。

ガイドラインは医療者向けのものですから、一般の方にはやや記載内容が難しいかもしれません。
なのでこの記事で私が噛み砕いて説明していきます。

 


ニキビのでき方

男性ホルモンとアクネ桿菌(アクネかんきん)が主な原因。


大雑把にいうと、
このホルモンのせいで皮脂がたくさん分泌される→毛穴の出口が塞がってアクネ桿菌が増える→炎症が起きる→赤くなって痛みが出る、見た目が悪くなる
というサイクルです。 


ニキビは主に2つのステージからなる

急性炎症期

いわゆる出来立てホヤホヤ、赤くなっていて押したら痛い、みたいなヤツが多い時期ですね。
一般の方には赤ニキビと呼ばれています。

面皰(めんぽう)という、皮脂が毛穴の中で詰まっているブツブツがあるのもこの時期に含まれます。
黄ニキビと一般の方には呼ばれているようですね。

治療を始めて大体3ヶ月以内に維持期(真っ盛りのニキビがない状態を維持する時期)に移行しましょうということになっています。 


維持期

小さな黄ニキビや軽い赤ニキビがあるかないか、くらいの時期です。
ほとんど見た目が気にならないくらいの状態ですね。

この時期でも再発しないようにお薬は必要です。
なお急性期で抗菌薬を使うこともありますが、耐性菌(抗菌薬が効かない菌たち)が出ないように維持期では止めることが多いです。 

 

黄ニキビは潰すべきか

一応ガイドラインでは面皰の圧出(白い膿が溜まったぶつぶつを潰すということ)は選択肢の1つとして軽く推奨されています。
私は自分に出来た黄ニキビは全部潰しますが、あまり大きい場合は跡になることもあるので、どうせ皮膚科に薬をもらいに行くならその時に相談するのが良いでしょう。

 

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ニキビができたら皮膚科に行きましょう

ガイドラインには推奨度というものがあります。A、A※、B、C1、C2、Dとありまして、分かりやすく言うと、Aは効くという根拠が非常にしっかりした治療なのでぜひやりましょう、というものです。
Dに近づくにつれて有効性や根拠が薄くなっていきます。

 

ニキビ治療の急性期、維持期ともにアダパレン、過酸化ベンゾイルという成分が配合された薬が推奨されます。
というか両方のステージともに推奨度がAの治療はこの2つだけです。

 

アダパレンは炎症を抑えるお薬、過酸化ベンゾイルは直接抗菌作用のあるお薬です。


しかも抗菌薬と作用の仕方が違うので、耐性菌は生まれません。

単剤ならアダパレンはディフェリンゲル、過酸化ベンゾイルはべピオゲルという名前のクリームですね。


基本的に皮膚科で出してもらう薬になります。

なお必ずしも美容皮膚科である必要はなく、薬さえ出してもらえれば普通の皮膚科でも問題ないと思います。

 

急性期限定で抗菌薬も使っても良い

激しいニキビの場合には抗菌薬も有効です。
飲むタイプと塗るタイプがありますね。

 

これらは長期間内服し続けると耐性菌ができる場合がありますので、急性期を乗り切ったらやめるべきです。


以前にした抗菌薬についてのお話でもこのことは触れていますが、ニキビ治療でも同様です。先述した過酸化ベンゾイルと抗菌薬が組み合わさったクリームなどもあり、お手軽ですが、ニキビがおさまってからもずっと使い続けるのはやめましょう。


皮膚科で教えてもらえると思いますけども。

 

市販薬はないのか?

海外から取り寄せたりすれば市販薬も手に入るようですが、お勧めしません。

長期間使用することになりますし、保険が効きますので診療代込みでも皮膚科でもらう方がランニングコストは安いと思います。
同じ成分でも含有量などが違うこともありますし。

 

この成分がニキビに効く!と謳って、別の成分を使った市販薬も販売されていますが、有効性の証明されていないものなど多々ありますので使わない方が無難です。

 

さらに抗菌薬など併用する場合はやめるタイミングなど皮膚科医にみてもらう方が良いでしょう。 

ニキビにピーリングってどうなの?

「ピーリングで治りました!」みたいなレビューがInstaなどで結構ありますよね。

ガイドラインでの推奨度はC1。

推奨される治療が効かなければ選択肢の1つになる、程度の位置付けです。

保険適応になっている治療との比較はまだきちんと行われていないからですね。

確かに有効性があるという論文もありますが、アダパレンや過酸化ベンゾイルの方が効くという証拠が多いですし、研究の質も高いです。

何よりピーリングは保険適応でないので高いです。

私なら安いし効く証拠が豊富に揃っている方を選びますね。

 

ピーリングが効くという広告が多い理由

ピーリングの広告が多いのは、皮膚科受診を勧めるよりもピーリングの広告を貼ってそちらに誘導する方が儲かるからでしょう。

 

正直私も「医者からみてもピーリングがいいよ!」「この美容液さえ塗ればニキビが消える!」なんて言えば広告収入がたくさんもらえるのかもしれません。

 

本当にお勧めなものは紹介しますし商品の広告も貼るつもりですが、このブログの趣旨に反するのでそんなことは言いません。

読者の方が皮膚科を受診しても私には何のインセンティブもありませんが、上記の薬を塗ることが一番効果があると思っているのでお勧めしています。

私が皮膚科開業医なら宣伝になるのでしょうけれども。

 


ちなみに2つ相反することを主張する人がいる時に、どちらがより信用に足るかを判断するために参考になる考え方があります。


この記事はニキビの記事ですので、また別記事でいずれ紹介しましょう。

 

皮膚科で前お薬もらったけど皮膚がカサカサになったよ

これはよくある悩みだと思います。

確かに副作用で皮膚がカサカサしたり、赤くなったりすることがあります。

 

使用し始めの時期を乗り越えれば大抵は起こらなくなるのでそれまで使用し続けられるかが肝ですね。

 

皮膚科受診の際にヒルドイドなどの保湿剤を処方してもらい先に塗る、肌に塗っている時間を最初は減らすなどで対応しましょう。

 

私も最初は少しカサカサしたので、シャワーを浴びた後に塗って、朝起きたら洗い流すようにしていました。
これだと肌についている時間は8-10時間くらいですよね。

 

これでも十分効果があった上に、カサカサにもなりにくかったので私はこういう使い方をしてます。

 

この薬は継続使用が大切なので、皮膚科医と相談しながらドロップアウトしない方法を見つけられたらいいですね。

 

ちなみに塗るのを完全にやめるとまた出てくることがあります。


1日1回から2-3日に1回塗る、というように頻度は減らしていけると思いますが、こればかりは出来やすい体質や時期などにもよりますから、一旦消えたらもう一切使わなくていいんだ!と思わないでいる方が精神的にも良いでしょう。

 

 

炎症が激しいと瘢痕(はんこん)といって、跡が残ることがあります

ステロイドの局所注射なども選択肢にはなりますが、こちらは治すのは難しいかもしれません。

 

なお瘢痕に対するピーリングやヒアルロン酸の注射などは効くという十分な根拠がないため推奨されていません。

 

100%効かないと証明された訳ではありませんが絶対効くよ!というのは嘘です。

騙されないようにして下さい。

 

 


その他にも治療法は色々ありますが、上記の治療がベストでしょう。


怪しげな健康食品やエステにお金を使うより、まず皮膚科を受診しましょう。

 

私の妻にも勧めて治療しましたが1ヶ月ほどで(時々塗るのをサボっていましたが)背中ニキビがかなり綺麗になりました。

同僚の皮膚科医にもこの記事を書くにあたり意見を伺いましたが、同意見ですし彼も自身の結婚式前に使っていたようです。

 

 

なおクリームもお薬なので皮膚科医と相談しつつ使ってくださいね。

時間とお金をムダにせず綺麗にニキビを治療しましょう。