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現役医師が暮らしを豊かにする知識やモノを紹介します。医者や医療の実情も時々語ります。

''コスパが良い''の本当の意味

コスパが良い(高い)ってよく聞く言葉ですよね。

ネットや周りの人にコスパが良いと勧められて、あれ?なんだかガッカリ...なんていう経験はありませんか?

 

なぜそういうことが起こるのか考察したいと思います。

 

 

安い=コスパが良いというものではない

コスパはそもそもコストパフォーマンスの略で費用対効果のこと。

支払ったお金、あるいは時間に比べて得られる価値が高ければ高いほど良くなります。

 

つまり高いものでもその分得られる価値が高ければコスパは高いわけです。

 

 

 

例えば服ではどうだろう

例えば「コスパが良い 服」と検索してみると、コスパが良い服ランキングが出てきます。

1位はGU、2位は無印良品、3位はH&Mという結果に。

でもこれって自分のこだわりや収入によって変わってくるはず。

 

服にさほどこだわりがない人にとっては10000円のシャツなどそもそも論外、安く買えればそれだけでコスパが高い。

なぜならそもそも服に価値を見出していないので、どんなに良い服を買ってもそれだけの価値を感じられないからですね。

 

そういう人にとっては安ければ安いほどコスパが高くなるわけです。

 

 

ハイブランドでモードファッションがしたいんだ!という人がそういうサイトを見て買う1000円の服より、本当に欲しいブランドの100000円の服の方が彼にはコスパが良いかもしれません。

 

単純計算ですが1回しか着ない1000円の服より、100回以上着る100000円の服の方が価値がありますよね。

 

食事についても同じ

例えばあなたがとてもグルメな重役だとしましょう。

 

「あのステーキ屋1000円でかなりコスパが良いですよ!」

食事には興味がない職場の後輩に勧められて、そのステーキ屋を訪れます。

グルメなあなたは、「美味しくないなぁ。この前行った3000円ですごくうまいステーキを食べられるところの方が良かった。」と感じるかもしれません。

 

3倍の値段を払ってもあなたにとってはそちらの方がコスパが良いのです。

1000円で得られない価値を手に入れているからですね。

 

 

人によって価値の重点が違う

何に価値を置いているか?ということに注意して判断しないと上記のようなことが起こります。

 

コスパが良いと謳う人、ネットなどを見たら、何に価値を置いているのか?ということに注目してみてください。

 

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さらには収入や所持金などによってもコスパは影響される

お金がない場合、そもそも高いものは思考の対象外です。

選択肢が狭いので、対価が大きいものの割合も当然減ります。

 

お金が有り余っている人にとっては支出はさほど気にならないので、とにかく得られる価値が高いものを求めがち。

 

 

ですからその人のお金使いによってもコスパの判断基準は変わってくるわけです。

バランス感覚の良い人の意見を参考にしないと、「安いだけじゃん」、「確かに良いけど高すぎ」となってしまいます。

 

無料はコスパが良いか?

タダ、と聞くと飛びつきたくなりますよね。

行動経済学(わかりやすく言うと心理学みたいなものです)においても、無料と1円では大きな差があると言われています。

 

無料だから〜は損をしている

無料だから、どっちでも良いけどサービスを利用する

と言うのは実は損をしていることがあります。

 

・アイスを食べたい気分なわけではないが、無料で配布しているアイスクリームを手に入れようとして長蛇の列に並ぶ

・今なら期間限定で無料なので、使わないサイトの会員登録をしてみる

 

確かにお金は消費していませんが、そのサービスが本当は必要でないなら時間を無駄にしているわけです。

 

その上後々で必要ないサービスにお金を払うリスクも増えます。

 

抱き合わせ商法の罠

①普通の選択肢

 

A. この雑誌を年間定期購読すると年8000円です。

C. 雑誌とオンラインの購読権のセットだと12000円です。

 

これだと普通ですね。

 

②無料、を利用した選択肢

A. この雑誌を年間定期購読すると年8000円です。

B. オンラインで1年間分の購読権は12000円です。

C. 雑誌とオンラインの購読権のセットだと12000円です。

 

 

これらの選択肢だとどうでしょう。

 

Bの選択肢なんて選ぶ人はまずいませんよね。

 

しかし①よりもCを選びたくなってきませんか?

Bの選択肢があることで、無料でオンラインの購読権がついてくる気がしてしまうんです。

 

オンラインの購読権なんて必要ない人でも、Cを選んでしまう割合が増えることがわかっています。

 

この場合は自分が価値を感じているものは雑誌自体なわけですから、オンラインがついてくることで得られる価値はあまりありません。

 

なのでコスパが一見良さそうに見えて、4000円もAより損しているわけです。

 

 

身の回りにはこういった商法は結構あふれているので、このカラクリを自覚することで正しい選択ができるようになると思いますよ。

 

 

 

当ブログはワンランク上の生活を目指しているわけですが、セレブな生活ができるようなお金は持ち合わせていません。

 

そこで必要になるのが知識とバランス感覚。

私の視点で、ですが自分の知識や経験、センスを生かして読者の方にも対価を払う価値のあるモノ、サービスを紹介していけたらなと思います。

 

 

 

本当に自分にとってコスパが良いものを見極められる視点を身に付けたいですね。

 

医者の一日 暇な科の勤務医はこんな感じ

前回に続き、今回はまったりした科の医者の生活はどんな感じか公開しようと思います。

ちなみに病院にもよりけりなので一概にこれ通りでは全然ありません。

比較的忙しめな病院の暇な科、のよくあるパターンを紹介します。

 

まったりした科の医者の一日はこんな感じ

まったりした科といえば、皮膚科や精神科、眼科、糖尿病内科などになりますかね。

オペをバリバリされている皮膚科などは忙しいかもしれませんが少数でしょう。

皮膚科や眼科のオペは例外はありますが大体は1件1件の時間も短いですし。

 

7:30-8:00 出勤、回診

そもそもここから忙しい科と大きく違いますね。

ちなみに暇な病院だと9時出勤で問題ないところとかもあります。

忙しめな急性期病院という点ではカンファレンスもあったりするので、それまでには一通りのカルテチェック、個人での回診は済ませておきます。

 

9:00-13:00 外来

皮膚科や精神科になるとメインの業務は外来ですね。

朝はゆったりと出勤できますが、外来はなかなかハードですよ。

5-6分に1人診ないと時間通りに終わらない計算で12時まで外来枠が埋まっていたりするのですが、もちろんそんなに早く終わりません。

なので13時やら14時、忙しい時は15時くらいまで外来をやっていたりします。

 

その間休憩なしです。

めちゃくちゃ毎回待たされるけど何してるんだ!って自分が受診する側だときっと思いますが、サボっているわけではないのです。

 

13:00- 昼食

外来が終わればゆっくり昼食をとることができます。

こういったまったりした科は緊急入院がそもそもほとんど来ない、そして病棟急変も起こることが少ないためいきなり呼ばれることも少ないです。

外来がない日であれば11時くらいに早めの昼食なども可能だったりします。

 

14:00- 回診やカルテ記載、勉強会

 

基本的に手術や自分自身が施行する検査がない場合は病棟管理のみになりますので、正直さほど忙しくありません。

他の科からのコンサルトの対応などは結構あるので、18時くらいまではバタバタしていることもあります。

 

18:00 このくらいで帰宅できることが多い

基本的にかかってくる電話も少なめですね。

あまり急変しないですから。

やはりオペや自分自身でやる検査がなく、緊急が少ない分忙しい科と比べて圧倒的に日中に時間があります。

 

+αの業務は?

勉強会の準備なども手が空いた時に医局でコーヒーを飲みながら、なんていうことも可能です。

コーヒー

 

当直も少ないです。緊急はあまり来ないのでそもそも当直は存在しなくてオンコールだけのところもありますよ。

オンコールは自宅待機で呼ばれたら病院へ出動する、というやつです。

 

 

これならだいぶ常識的な労働の仕方ではないでしょうか。

それでもそれぞれの科ならではの大変なことがありますから、楽な仕事だとは思いませんがやはり時間にゆとりがあるのは良いことですね。

 

 

暇な病院だとまた話は変わってきますし、開業医は全然形態が違うと思われますので参考までに。

医者の一日 忙しい科の勤務医はこんな感じ

比較的忙しめな急性期病院(地域の大きな病院と思って下さい)での勤務医の生活を紹介しようと思います。

研修医の頃は色々な科を回ったので、そこでの体験をもとに比較的忙しい科とゆったりした科に分けてご紹介。

今回は忙しい病院の忙しい科の一日です。

 

忙しい科の医者の一日はこんな感じ

忙しい科といえば、内科なら循環器内科(主に心臓のお医者さん)や消化器内科(胃や腸、肝臓などのお医者さん)、あとは消化器外科や心臓血管外科などですね。

 

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6:30 出勤

出勤したらカルテをチェックし、患者さんに昨日との変化がないかだったり今日やるべき検査のオーダーがきちんとされているかを見ます。

そしてざっと担当の患者さんの様子を見に行きます。

採血結果などはこの時間はまだ出ていませんね。

 

7:30や8:00- カンファレンス

毎日行う夜間の新入院患者さんについてのカンファレンス、曜日ごとの色々な種類のカンファレンスがあります。

治療方針や術前の評価を科全体の医者でチェックするやつですね。

 

勉強会もこのくらいの時間に行う場合や夜にやる場合もあります。

最新の論文を紹介するような抄読会形式が多いかな。

 

9:00-18:00 手術やカテーテル胃カメラなどの検査

忙しい日には18時くらいまでみっちり手術や検査が入っていることもあります。

1つ1つは短くても4件、5件とあったり、1つが9時間くらいの大手術があったりとなかなか忙しいです。

 

昼食の時間は取れないことも多いですね。

ちなみに基本的に10時間を超えるような手術でも、術者が交代することは日本では少なくて、終わるまでずっといます。

その場合は休憩時間はもちろんなくて、ご飯やトイレにすら行けません。

アドレナリンが出るからか意外とトイレに行きたくなることはあんまりないのですが。

 

食べれる暇がある日ならばサッと昼食をとります。

食堂やコンビニ弁当の人がほとんど。院外に出て食べに行く、というのはまずあり得ません。

 

18:00-21:00 回診やカルテ記載、勉強会

昼食が食べられなかった場合は手術や検査が一通り終わった後に。

その後担当の患者さんに状態の変化がないか、診察したり日中にオーダーしていた超音波やCTの検査を確認したりします。

 

終日 :日中は鬼のように電話がかかってくる

医者はみんなPHSを持っています。

院内限定の携帯電話ですね(家でも繋がる恐ろしいシステムの病院もありますが...)。

みなさんも医者にかかってきているところを見たことあると思います。

 

これかかってくる件数すごいですよ。

看護師さんから:「あの薬の処方が明日で切れるけどどうしますか?」、「患者さんのご家族が来たのでICして下さい。」、「急変です!いますぐ来て下さい。」

研修医から:「この患者さんの検査の予定どうしたらいいですか?」、「担当患者さんが胸が痛いって言ってるんですけど...」

救急外来から:「〇〇歳男性の急性虫垂炎で手術をお願いしたいのですが...」

上級医から:「来週の勉強会の担当よろしくね」

...などなど色んなところからかかってきまくります。

 

+α 勉強会や学会発表の準備、オペの予習、勉強

以上に加えて勉強会や学会で発表することになっていればスライドを作る必要があり、明日オペがあるならその手順の予習も必要です。

さらには日々新しい知見が登場しますし、経験が浅いうちは担当したことのない症例もよく出くわすので毎日勉強が必要です。

 

 

そしてやっと帰宅し就寝、また一日が始まるということですね。

 

...さらに当直が加わる

以上で普通の一日は終了ですが、週に1-2回程度は17時頃から朝まで当直が当たります。

夜通し病棟での急変対応+救急で来院した患者さんの対応をするというもの。

 

患者さんが全然来なくて、急変もしなければ全く呼ばれず眠れます。

ただこんな忙しい病院ではそんなことはまずありませんから、大抵そんなに眠れません。

明け方3時だろうが電話で叩き起こされます。

 

病院や科によっては当直が終わったら朝〜昼で家に帰っていいよというところもあります。

帰れる雰囲気でないところもあり、その場合そのまままた一日が始まることになります。

7時から翌日の21時まで、つまり38時間くらい連続で労働...。

 

労働基準法とは一体...

書いていて明らかにこんな生活は大変すぎておかしいと思いますが、実際こんな風に働いている医者が結構います。

しかも労基に通報されるから時間外をつけるな!と言われて時間外を過少申告して給料も大してもらえないということもしばしば。 

 

あくまで参考ですが、忙しめな病院の忙しい科だと本当にこんな感じです。

 

 

「全然担当医は会いに来てくれないし、来ても5分くらいだ!」と不満に思う入院患者さんの気持ちもすごく分かりますが、こんな生活だと行きたくても会いに行けないんですよね。 

 

少なくとも例えで挙げた病院の医者はみんなそれでも一生懸命に診療に当たっていたので、誤解しないでもらえると嬉しいです。

 

 

次回は忙しめな病院の少しゆるい科の一日を紹介しましょう。

 

 

スタバ二次会のススメ

今の時期って忘年会やら、結婚式やらで飲み会めちゃくちゃ多いですよね。

この前ふと思いつきで二次会にスタバを利用したのですが、これがなかなか良かった。

スタバではなくてどこのコーヒーショップでも良いのですが、少人数の二次会ではオススメだ!と思ったので紹介。

 

 

スタバで二次会やるメリットってこんなにあるぞ

スタバ二次会のメリット7選

1. 安上がり

2. 居心地が良い

3. 長時間滞在可能

4. 服にタバコや油のニオイがつかない

5. お酒を飲めないので健康的

6. アクセスが良い

7. 翌日に響かない

どうですか?結構良さげじゃないですかね。

詳しくみていきましょう。

 

1. 安上がり

まずはやっぱりこれでしょう。少し食べながら飲んだとしても(酒ではなくコーヒーを、ですが) 1000円くらいにしかなりません。

居酒屋で二次会やるとイマイチな店でも大体一人2000円くらいにはなります。

たくさんの飲み会が続くこの時期には出費は少しでも低い方が良いですよね。

 

2. 居心地が良い

 

ほんのちょっと薄暗い落ち着いた空間で、しかもBGMも程よい音量で流れています。

ガヤガヤうるさい品のない方々はそうそういませんので、女性連れの場合特にオススメです。

 

3. 長時間滞在可能

長時間居座っても問題ない空気がスタバには漂っています。

さすがに10何人などでどんちゃん騒ぎは他の方に迷惑なのでよくないですが、5-6人くらいまででワイワイ話すくらいなら全然問題ない雰囲気でしょう。

小さな店舗などではまた雰囲気が違うかもしれませんので、空気を読みつつ行ってみて下さい。

 

4. 服にタバコや油のニオイがつかない

これ結構個人的に重要なのですが、服にあの臭いニオイがつきません。

つくのはコーヒーのいい香りです。

特にこの時期コートやら、スーツなど洗濯しにくいし価格帯も高めな服を着ていることが多いでしょうからこれは大きなメリットですね。

 

5. お酒を飲めないので健康的

デメリットでもありメリットでもあるという感じですが、むやみにお酒を飲まなくて済みます。

お酒が大好きでしょうがない方はバーやら居酒屋に行って下さい。

お酒飲めない、まあまあ好きくらい、一次会でたくさん飲んだしなあと思っているアナタが一番向いています。

 

6. アクセスが良い

スタバって結構どこにでもありますし、ドトールやらタリーズやらにも手を広げればさらにカバー範囲は広がります。

しかも大体駅の近くで、行きやすいし帰りやすい。

数人で行くときにもモメませんよ。

 

7. 翌日に響かない

飲み会の翌日が仕事、という方は多いでしょうし、休みであっても寝て朝を丸々潰すのはもったいない。

スタバ二次会ならコーヒーを飲みつつ酔いが程よく醒めた状態で帰路につけます。

その上そこまで遅くまで営業していないため健康的な時間に帰れます。

やっぱり飲み足りない気分だ!となればそこからまた居酒屋やバーに行っても良いですしね。

 

しかも飲み会の席って途中で帰ったり、切り上げたりしにくくありませんか?

なんとなく帰りにくくて無駄に長居してしまう、なんてことともおさらばです。

 

 

二次会といえば酒!ではなくスタバという選択肢も考えてみては?

参加者のキャラなどにもよりますが、根っからの酒好きがいない場合は選択肢に加えてみてはいかがでしょう。

一緒にいる人と話すことがメインならば、お金も時間も効率よく使えますよ。

 

 

抗生物質と培養の検査

抗生物質のお話最終回です。

ちょっと内容が詳しくなり過ぎてしまうかもしれません。
 
 

正しく抗生物質を処方してもらうだけではダメ!

しっかり診察してもらって適切な抗生物質を処方してもらったからもう安心、ともいかない場合があります。
 
基本的に抗生物質は多分これなら効くはずや!という想定のもと処方するので、100%効くかと言われると怪しいんです。
処方する時点では原因の菌自体を見つけているわけではないので。
 

そこで登場するのが培養検査です。

病院に行った時に2箇所も採血されたけどなんで?って思ったことがある人いませんか。
それは血液培養といって、2箇所から採血して後々検査室で細菌が生えてこないか調べる検査なんですよ。
培養検査も血液、尿、痰など、色々あるのですがこれをしておくと、後で何の菌による感染症か、どの抗生物質が効くのかがバッチリ分かります。
 
培養検査にも弱点があり、陽性率というのがありまして、絶対検出できるというものではないのです。
培養しなくても原因菌がほぼ決まっている若い女性の膀胱炎だったり、ほとんど培養が陽性にならない皮膚の感染症(蜂窩織炎といいます)だったりにはあまり有用ではありません。
 
それ以外の大体の場合では、菌が分かることでより一層その菌にフォーカスした抗生物質に変更したり、確実に効く抗生物質に変更したり出来ます。
 
なのでいくつかの例外を除いて、基本的には抗生物質の投与前には培養検査をやることが多いです。
 

抗生物質の投与前、というのが重要

この検査は基本的に抗生物質投与前にしないと陽性率が下がります。
中途半端に抗生物質で治療すると、完全には治っていないけれど、培養検査で検出できるほどには菌がいない、という状態を作り出してしまいます。
 
他の病院から、抗生物質を処方していたけど状態が悪くなってきたので診てください。といって患者さんが紹介されてくる。
培養検査の結果を教えてくださいと問い合わせると、やっていませんのお返事。
挙げ句の果てにはそもそもほとんど効かないであろうセフカペンピボキシル(抗生物質について思うこと①でお話ししたお薬ですね)が投与されている。
…といったことは日常茶飯事なのですが、これ大変困ります。
 
中途半端に抗生物質を処方されているので、うちに来てから培養検査してもなかなか陽性にならないんですよ。
それならいっそ何も投与せずに紹介してきて下さいよと思ってしまいます。
 
 
そういう病院は未だにたくさんあるので、読者のみなさんも少し知識をつけていただいて、賢く病院選びをして下さいね。
 

しっかりと診察してくれる病院を見つけて下さい 

抗生物質についてのお話は一旦これで終了です。
正しく使えば大変有効なお薬ですから、飲むこと自体を心配はしなくて大丈夫ですからね。
きちんとした診療をしてくれるお医者さんに処方してもらってください。
今回の3記事を読めば、ちゃんとした抗生物質の使い方をしてくれているかなんとなくは分かるはずです。
 

風邪で抗生物質を飲む必要はありません

前回の続きです。

 

みなさんに馴染深いと思われる抗生物質という単語で統一して話します。

そもそも抗生物質を使う必要がない場面でも使われているところが散見されるので今回はそのお話。

 

 

とりあえず熱があるから抗生物質を出しましょう...?

熱があるから抗生物質だ!という先生がいまだに稀に存在します。

CRPが高いから抗生物質を出そう、というのも似てますね。こっちの方が多いかも。

(CRPとは炎症反応が起きていることを示す血液検査の値です。確かに感染症の時はほとんどの場合に数値が上がりますが、少ししか上がらないこともあるし、上がっているから感染症というものではありません。)

 

 

ろくに診察もせず、抗生物質を飲んでおけば治るよ、みたいなノリですね。

そもそも熱が出るのは感染症(ウイルスや細菌で起こる病気)だけではありません。

腫瘍による熱、薬剤性の熱、関節に結晶が溜まって起こる熱、他にもたくさんあります。

当然抗生物質では治りません。

もし感染症であったとしても、抗生物質にも適材適所があるので、効かない抗生物質だと治りません。

感染症だと思った時には、感染源の臓器(肺やら腎臓やら)、患者さんの背景(免疫を抑える薬を飲んでいるとか)、原因となっている菌を考えて抗菌薬を処方するのが基本です。

十分な診察と問診なしで、適切な抗生物質の処方は出来ません。

熱が出ているから、採血で炎症反応が高いから抗菌薬を処方する、なんて医者じゃなくても誰でも出来ますからね。

 

 

風邪なので抗生物質を出しておきますね...?

みなさん一度は風邪で病院に行ったことがあると思います。

その時に抗生物質を処方されたことありませんか?

 

 

風邪の原因はそもそも...

風邪は医学用語でウイルス性上気道炎と言います。

原因が何かって、名前の通りウイルスです。

先ほども少し触れましたが抗生物質は細菌を殺す薬であって、ウイルスを殺す薬じゃありません。

ウイルスを殺す薬は抗ウイルス薬です。

しかも風邪の原因のウイルスはコロナ、ライノなどなど様々あり、型もたくさんあるため実質それらを殺す薬はありません。

抗生物質では風邪は治りません。

 

 

でも飲んだらいつも風邪治るよ?

風邪はほっといても勝手に治ります。

自己免疫で治ります。

抗菌薬を飲んだから治るのではなくて、関係なく勝手に治っているだけです。

抗菌薬は細菌を殺すという効果しかないので、治るのが早くなるわけでもなく、症状が軽くなるわけでもありません。

飲んで変わることといえば、下痢しやすくなるくらいでしょうか。

 

 

医者にこれは風邪ですね、と言われて抗菌薬を出されるのは矛盾しているんですね。

もちろん細菌性の肺炎などの細菌性の感染症なら使いますよ。

でもそれならその時は''肺炎なので''抗菌薬を飲んでくださいと言われるはずです。

 

 

なんで抗生物質処方されるの?

医者が風邪だと思っているのに抗菌薬を処方するのにはいくつかの理由が考えられます。

1. もし風邪ではなくて細菌性の肺炎などの病気だったら...と思って予防線を張ってしまう

2. 患者さんが抗生物質を求めて来院するので、それに合わせて処方している

3. そもそも抗生物質が効かないことを知らない(これはさすがにいないでしょうか)

これらあたりになるでしょう。

適切な診察と問診で風邪とその他の病気は大体鑑別出来ます。

そして適切な診察をした上で、風邪であれば放っておけば長くて4-5日経てば治りますので、もし治らなければ来てくださいとお伝えすれば良いのです。

 

治らなかったら来てね、というのは無責任ではないかと感じる方もいるかもしれませんが、症状が風邪として典型的(鼻水、咳、喉の痛みが揃っているなど)で、勝手に治るのがウイルス性上気道炎です。

この勝手に治るというのがポイントで、診察した時点では確定診断は出来ません。

数日経って自然に症状が治まってはじめて、ああやっぱり風邪だったんだなと分かるんですよ。

ちなみに咳は長引くことが多いですのでご注意を。

 

 

むやみやたらに抗生物質を処方していると、耐性菌といって抗生物質が効かない菌が増えるんです。

しかもお金も無駄にかかります。

これはかなりの確率で風邪だ、しかも若くて元気のある人だし、もし肺炎でも最悪重症にはなるまい...という状況で抗生物質を出す必要はありませんよね。

 

抗生物質の出し方だけで医者の能力は測れないとは思いますが、医者としての基本ではありますし、抗生物質はかなり身近な類のお薬です。

きちんとした抗生物質の出し方をしてくれる方に診てもらってくださいね。

 

 

次回で抗生物質についてのお話は一旦終了です。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この抗生物質は意味がない? 効かない第3世代セフェム

日々色々な抗生物質を処方し、処方されているのを見て思うこと。

少し専門的になるかもしれませんが、なるべくわかりやすく書きました。

 

実は呼び方にも色々ある

ちなみに一般の方には抗生物質という言葉が馴染みがあると思いますが、私をはじめ医療者は主に抗菌薬と呼んでいます。

厳密には意味が違うんですよね。

''抗生物質''は微生物が産生した他の微生物をやっつける薬

''抗菌薬''は微生物をやっつける薬全般

つまり抗菌薬の方が抽象度が高い言葉なんです(抗菌薬→果物、抗生物質→いちご、みたいな感じ)。

だから合成抗菌薬のクラビット®︎(聞いたことある人も多いかな)を抗生物質と呼ぶのは間違いなんですね。

医学生とか良くわかっていない子もいるので、もし見ていたら気をつけてね。

まあそんなことは今回どうでも良いのです。

 

 

間違った使われ方をしている抗菌薬多すぎ問題

 抗菌薬は素晴らしいお薬であり、私もほとんど毎日使っていますが、残念な使い方をされている例を非常にたくさん見かけます。

よく見る悪い例

・経口(点滴ではなく口から飲むお薬)ではほとんど意味がないお薬を処方している

・とりあえず熱が出ているから抗菌薬を処方する

・風邪なのに抗菌薬を処方する

・培養検査をする前に抗菌薬を投与する

などなど色々あるんですね...

 

経口(点滴ではなく口から飲むお薬)ではほとんど意味がないお薬を処方している

めちゃくちゃたくさん日本で処方されているお薬のフロ○ックスやメイ○クト。

セフカペンピボキシルやセフジトレンピボキシルという一般名(別名みたいなものと思ってください)ですね。

両者ともに日本で大人気のお薬です。

ですが私は一切処方しません。というかきちんとした知識のある医師はまず使いません。

 

 

なぜ使わないのか

これらは第3世代セフェムという分類の抗菌薬なのですが、かなり多くの種類の細菌に効くんです。

肺炎や髄膜炎など色々な病気の治療に第3世代セフェムの点滴薬は使われていますね。

ですがこれ口から飲むと全然効かないんですよ。

bioaveilabirityといって口から飲んだ時の血中に移行する割合が非常に低い。

種類にもよりますが大体10-20%くらいしか血中に行き渡りません。

なので濃度が低すぎて細菌が死にません。

 

じゃあ濃度を高めるためにたくさん飲んだら? 

ー下痢するんですよね。

結局血中にはどれだけ口から摂取してもたくさん入らないので、経口で使う意味が全くない薬になります。

 しかも子供に使うと頻度は多くないですが低血糖を起こすことが知られています。

さらに培養検査といって血液中のばい菌の種類を調べる検査の陽性率が下がります。

この培養検査というのはかなり大切で、開業医さんなどではなかなか全例施行は難しいかもしれませんが、細菌が検出されればどんな抗菌薬が効果があるのかバッチリ分かるんですよ。

 

 

つまり治さない上にどんな薬が効くか判断するための検査も無効にする、そして下痢や小児には低血糖の副作用もあるという最悪の薬です。

 

じゃあなんでそんな薬処方されてるの?

第3世代セフェムは多くの種類の細菌に効くと書きました。

だから口からのめて色んな菌に効くし便利じゃん!といって流行ったんですね。

処方している人はbioaveilabirityが低いことを知らない/そもそもbioaveilabirityという概念自体知らないので、効くと思っている。

製薬会社もこんなにたくさんの種類の菌に効くんですよと説明する(濃度が十分高ければ、の話なんですけどね)。

みんな出しているし余計にみんな処方する。

このループです。

最近は感染症教育が進んできているので、若い医師より年配の方にその傾向が強い印象があります。

 

 

胡散臭い広告で良く見るこの薬は使うな!みたいな煽りは個人的に好きではないのですが、患者さんの不利益が少しでも減るように書かせてもらいました。

最近は感染症内科医により雑誌などのメディアでもこの件は取り上げられたみたいですね。

正しい知識が広まってほしいものです。

 

 

続きは次回。